交通事故 被害者専門弁護士事務所

むくの木綜合法律事務所

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4.眼・耳・鼻・口・醜状障害

  • 4-1 眼
  • 4-2 耳
  • 4-3 鼻
  • 4-4 口
  • 4-5 醜状障害

4-5 醜状障害

醜状障害に関しては、傷病名としては、顔面挫創、右頬部擦過傷などが付けられますが、傷病名別のアプローチではなく、残存した傷跡がどのようなものか、というアプローチになります。

(1)認定基準

残存した醜状障害に関する後遺障害等級の認定基準は以下のとおりです。

自賠責保険 醜状障害の認定基準

等級

醜状障害の内容

7

12 外貌に著しい醜状を残すもの、

9

16 外貌に相当程度の醜状を残すもの、

12

14 外貌に醜状を残すもの、

「女性の外貌に醜状を残すもの」は、削除されました。

14

4 上肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの、

5 下肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの、

「男性の外貌に醜状を残すもの」は、削除されました。

※ 平成22年6月10日以降に発生した事故に適用されます。

 

醜状障害に関しては、裁判所により男女間格差は違憲であるとの判断がなされ、2011年5月2日、政令第116号により、以下の修正が加えられました。

①別表Ⅱ7級12号の「女子の外貌」を「外貌」に改めること、

②別表Ⅱ9級16号を9級17号に改め、9級16号は、「外貌に相当程度の醜状を残すものとすること、

③別表Ⅱ12級14号の「男子の外貌」を「外貌」に改め、14級15号を削除すること、

④別表Ⅱ14級10号を削除すること、

この政令は公布日(2011年5月2日)から施行し、自動車損害賠償保障法施行令の規定は、2010年6月10日以降に発生した自動車の運行による事故について適用するとされています。そのため、2010年6月10日以前の事故日であれば、上記基準の適用はありません。

 

①外貌に著しい醜状を残すもの:7級12号

外貌の著しい醜状とは、頭部では手のひら大以上の瘢痕が残ったとき、頭蓋骨に手のひら大以上の欠損が残ったときをいいます。手のひらとは、指の部分を除いた手の面積で、大小の違いがありますが、被害者の手のひらの面積と比較して、等級が認定されます。顔面部では、鶏卵大以上の瘢痕・5cm以上の線状痕、10円硬貨大以上の窪みを残したときは、7級12号に該当します。耳殻軟骨部の2分の1以上の欠損、鼻軟骨部の大部分を欠損したときも、著しい醜状に該当します。

 

 ②外貌に相当程度の醜状を残すもの:9級16号

新たに設定された等級ですが、これについては「外貌に相当な醜状を残すものには、現在、外貌の著しい醜状として評価されている障害のうち、醜状を相当程度軽減できるとされる長い線状痕が該当する。」とされています。かなり曖昧な判断基準ですので、7級となるか9級となるかは、治療経過等からケースバイケースで判断するしかないでしょう。

 

③外貌に醜状を残すもの:12級13号

頭部では鶏卵大以上の瘢痕、または頭蓋骨の鶏卵大以上の欠損、顔面部にあっては10円銅貨以上の瘢痕または3cm以上の線状痕、頚部では鶏卵大面積以上の瘢痕で人目につく程度以上のものがこれに該当します。頭蓋骨に鶏卵大の欠損が認められても、この部分に人工骨がはめ込まれて、欠損部分が修復されていれば、等級の対象となりません。どんなに醜い醜状であっても、眉毛・頭髪に隠れる部分は、計算対象から除外されます。また、顎の下にできた醜状で、正面から確認できないものは、これも醜状痕としての後遺障害対象から除外されています。

 

④2個以上の瘢痕や線状痕

交通事故では、顔面に複数の醜状痕を残すことも予想されるのですが、そのような場合、自賠責保険の運用規定では、「2個以上の瘢痕または線状痕が相隣接し、または相まって1個の瘢痕または線状痕と同程度以上の醜状を呈するときは、それらの面積、長さなどを合算して認定する。」と規定されています。ところが、「相隣接する」、「相まって」については、具体的な記載がなされておらず、調査事務所の判断にもバラツキがあり、問題の多い部分です。

 

醜状痕の後遺障害認定は上記の醜状が存在することが前提ですが、さらに他人をして醜いと思わせる程度、人目につく程度以上でなければならないとされています。

「他人をして醜いと思わせる程度、つまり、人目につく程度以上のもの」という部分については、これを判断するために、調査事務所は醜状痕の後遺障害認定申請を行った被害者の方に対し、面接調査を行い、色素沈着の程度・部位・形態などの確認を行い最終的な判断をしています。

そうすると、調査事務所の担当者の主観が入らざるを得ません。そこで、弊所では、被害者に同行して面接に立ち合い、具体的に、どんな大きさ、長さであったのかを確認して、調査事務所の主観を排除するようにお願いをしています。

 

⑤上肢・下肢の醜状

上肢の露出面とは、上腕部、肩の付け根から指先、下肢の露出面は大腿、足の付け根から足の背部までをいい、これらの部分に、手のひら大の醜状痕が残ったときは、上肢で14級4号、下肢で14級5号が認定されます。

手のひらの3倍程度以上の瘢痕であれば、著しい醜状と判断され、12級相当が認定されています。

上肢または下肢の露出面に複数の瘢痕や線状痕が存在するときは、それらの面積を合計して評価することになります。

 

⑥日常露出しない部位の醜状障害

日常露出しない部位とは、先のイラストの塗りつぶした範囲の胸部・腹部・背部・臀部を言います。

胸部+腹部、背部+臀部の合計面積の4分の1以上の範囲に瘢痕を残すものは14級が、2分の1以上の範囲に瘢痕を残すものは12級相当が認定されます。

 胸部+腹部、背部+臀部の合計面積の4分の1以上の範囲、または2分の1以上の範囲となると、相当に大きなもので、女性であれば、水着姿になれない深刻なものです。

露出度は、年々高くなっており、最近の傾向として、運用上は、これ以下の面積であっても、等級は認定されています。

「他人をして醜いと思わせる程度、つまり、人目につく程度以上のもの」では、上記の認定基準で諦めることなく、後遺障害等級の申請は行った方がよいでしょう。

 

(2)後遺障害等級申請のタイミング

醜状障害についての後遺障害等級申請については、受傷から6か月を経過した時点で症状固定として、直ちにこれを行なうべきです。後遺障害等級申請は創面癒着後6か月とされていますから、縫合したときなどは、糸抜きをしてから180日後となります。

弊所では、180日を経過すれば、他に骨折などで治療中であっても、顔面の醜状痕だけは症状固定として、早期に後遺障害等級申請をしています。なぜなら、創傷、切傷は、時間の経過とともに、僅かではありますが、収縮を続けていくからです。

線状痕については、5㎝以上かそれ以下か、また、3cm以上かそれ以下かで後遺障害等級に大きな差がありますから、できるだけ早く症状固定としたほうがよいのです。

また、多くの被害者の方は、顔面の醜状を気にするあまり、美容形成等で形成術を急がれますが、医大系の形成外科における治療は、受傷から6~8か月後、創や醜状の安定を待って、着手されています。つまり、目立たなくする、ベストな治療は、それほど急いで実施されるものではありません。

したがって、まずは6か月の経過を待って症状固定し、その後、醜状痕を除去するための治療をなされた方がよいのです。

 

(3)後遺障害診断書の記載要領

後遺障害診断書は、見開きA3サイズですが、「醜状障害」の記載欄は、右上の隅、4.3×4.5mm と非常に小さく、記載を受けても、大変見にくいものです。

そこで、後遺障害診断に際しては、

①まず、デジカメで醜状の写真撮影を行い、A4サイズのプリント画像にします。

③プリント画像に、醜状の長さや面積を計測して書き込みます。

これを医師に見せて、間違いのないことを確認してもらい、後遺障害診断書に、別紙参照の記載を受けます。こうしておけば、より明確に醜状痕の状態が把握できます。

 

(4)他の認定基準との比較

①顔面神経麻痺

顔面神経麻痺は、本来は、神経系統の機能の障害ですが、その結果として現れる口の歪みは、外貌に醜状を残すものとして後遺障害等級12級13号となります。

 まぶたの運動障害は、顔面や側頭部の強打で、視神経や外眼筋が損傷されたときに発症します。

ⅰまぶたを閉じる=眼瞼閉鎖

ⅱまぶたを開ける=眼瞼挙上

ⅲ瞬き=瞬目運動

まぶたには、上記の3つの運動があり、まぶたに著しい運動障害を残すものとは、瞼を閉じたときに、角膜を完全に覆えないもので、兎眼と呼ばれています。同じく、まぶたを開いたときに、瞳孔を覆うもので、これは、眼瞼下垂と呼ばれています。単眼で後遺障害等級12級2号、両眼で同11級2号となります。これらも、上記等級と、外貌の醜状障害による等級のうち、いずれか上位の等級が選択されます。

 ②耳介の欠損

耳介軟骨部の2分の1以上を欠損したときは、耳介の大部分の欠損としては、後遺障害等級12級4号ですが、醜状障害でとらえると、外貌に著しい醜状を残すものとして7級12号になります。

耳介の一部の欠損では、耳介の欠損としての等級はありませんが、それが、外貌の醜状に該当すれば、後遺障害等級12級13号が認定されることがあります。

 ③鼻の欠損、斜鼻、鞍鼻

鼻軟骨部の全部、または大部分の欠損し、鼻呼吸困難、または嗅覚脱失を残したときは、後遺障害等級9級5号ですが、醜状障害と捉えたときは、同7級12号となります。

上記の等級は併合されることはなく、いずれか上位が選択されます。

鼻軟骨の一部、または鼻翼を欠損したときは、鼻の欠損としての等級認定はありませんが、外貌醜状では、後遺障害等級12級13号が認定されることがあります。

斜鼻

鞍鼻

鞍鼻

鼻骨の側面を打撃したことで鼻骨が横にずれた形となり、斜鼻を残したとき、打撃が鼻骨の上から加わり、鼻骨が脱臼、陥没する鞍鼻を残したとき、これらについては、鼻の後遺障害として等級の定めはありませんが、いずれも醜状障害として後遺障害等級申請することになります。

程度により、後遺障害等級12級13号、9級16号、または7級12号が認定される可能性があります。イラスト右端のような鞍鼻であれば、後遺障害等級7級12号となる可能性が高いといえます。